バイクカスタムは何から始める?整備士が選ぶ初心者向けパーツ12選

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「バイクをカスタムしてみたいけど、何から手を付けたらええねん」
これは整備士をしてると、よく聞かれる質問です。

結論から言います。最初の一個は「見た目」ではなくて「困ってること」から選んでください。いきなりマフラーとかフェンダーレスに行く人が多いんですが、その辺は規制がいちばん厳しいところで、車検や保安基準をクリアしていないパーツも蔓延っています。

この記事では、現役整備士が、DIYカスタムの1個目に選んでほしいパーツを、目的別に12個紹介します。車種を選ばずに付けられるものを中心に選んでるので、自分のバイクに置き換えて読んでもらえます。

この記事でわかること

  • 初心者のカスタムが失敗する、いちばん多い3つのパターン
  • 手ぇ付ける前に絶対に守ってほしい鉄則3つ
  • 目的別(見た目・快適性・積載・転倒対策)のおすすめパーツ12個
  • ウインカーやマフラーみたいな「一段上」のパーツの線引き

1. 初心者のカスタムが失敗する3つのパターン

お店にはよく「自分で付けようとしたけどアカンかったわ」という状態で持ち込まれてきます。パターンはだいたい決まってます。

パターン① ボルトをナメる

いちばん多いです。しかも厄介なことに、ナメたあとの方が金がかかります。専用工具で外すか、最悪ドリルで揉んで壊すことになるので、パーツ代より作業工賃の方が高くつくパターンもざらです。

原因のほとんどは工具です。安物の工具は寸法の精度が甘くて、ボルトとの間に隙間ができる。そこに力を掛けると角が削れます。工具の選び方はこっちの記事で詳しく書いてます。

パターン② パーツのフィッティングが出てない

箱から出して当ててみたら、そもそも穴が合わん。ステーが1cm足らん。塗装が薄くて手で触ったら剥げる。——これ、安い海外製の無名パーツでめちゃくちゃ多いです。

ちゃんとしたメーカーは金型を起こして、実車に当てて確認して出してます。その手間の差がそのまま値段の差です。

パターン③ 適合を間違えて買う

「同じ車種名やから大丈夫やろ」で買って、届いてから付かんことに気づくパターン。バイクは同じ車名でも年式でフレームやカウルなど細部に違いがあることもあります。返品でごたごたして、結局手元に使えないパーツが残るパターンは最悪です。

整備士からの注意

この3つは全部「買う前」と「作業前」に防げます。逆に言うと、失敗する人はだいたい買うところで既に間違えてます。次の章の鉄則だけは守ってください。

2. 手を付ける前の鉄則3つ

鉄則① 外した純正部品は絶対に捨てない

これがいちばん大事です。理由は3つあって、①元に戻せる ②不具合が出たときに切り分けができる ③売るときに純正に戻した方が高い。

「もう戻さんわ」と思って捨てた人が、半年後に「やっぱり純正いるやん」って言うのを何回も見てます。袋に入れて、何のボルトか書いて箱にまとめとくと分かりやすいです。

鉄則② 適合は「車種名」ではなく「型式と年式」で見る

メーカーの適合表は、必ず型式(車検証や軽自動車届出済証に書いてあります)で確認してください。「〇〇 2018年〜」みたいな年式表記も併せて見る。ここを面倒くさがると、さっきのパターン③をやります。

確認するものどこに書いてあるかなぜ必要か
型式車検証/軽自動車届出済証適合表はこれで引くのが基本
年式(初度登録)車検証/軽自動車届出済証同じ型式でも途中で仕様が変わることがある
車体番号フレームの刻印/車検証細かいロット違いの確認に使う
ハンドル径・ネジ径実測グリップ・ミラー・バーエンドで必要

鉄則③ 安全に直結する部位は最後にする

ブレーキ、ホイール、タイヤ、ハンドル、ステム、サスペンション。ここは「安いから試してみる」場所ではないです。壊れたときに転倒して、事故になる可能性がある部位です。触るとしても、経験を積んでからか、素直にプロに任せてください。

3.【見た目】変えると気分が上がるパーツ

工具が少なく済んで、失敗しても被害が小さい。カスタムの入り口として一番おすすめの3つです。

グリップ

難易度 低工具パーツクリーナー・細いドライバー時間30分〜1時間

見た目も変わるし、握りやすさが変わるので疲れ方まで変わります。地味ですが体感がわりと大きいパーツかもしれません。

選ぶときは、左右で内径が違うことに注意してください。スロットル側(右)は太くて、クラッチ側(左)はハンドルバーに直接付くので細い。汎用品でもここは合わせる必要があります。

先が細いエアーガンがあれば作業がやりやすいです。工場ではエアーガンを使用しています。

バーエンド

難易度 低工具六角レンチ時間15分

片側ボルト1本で外れるので、いちばん手軽です。自分好みの色などで見た目のアクセントになるうえ、重いタイプに替えると振動が減るという実用的な効果もあります。

固定方式(内側から突っ張るタイプか、ネジ止めか)が車種で違うので、そこだけ確認してください。

ハンドルバーが社外品だと固定方式も純正の状態と違う可能性が高いので注意。

ナンバーボルト・ボルトキャップ

難易度 低工具ドライバーまたは六角レンチ時間10分

安いのに一番「変えた感」が出るところです。ステンレス製だと錆びに強くてGOOD。

ただしナンバープレートの数字や文字を隠すようなカバー類はアウトです。大きすぎるキャップなどは注意が必要です。

4.【快適性】いちばん満足度が高いパーツ

ツーリングにたくさん出掛ける人へオススメ。

USB電源・シガーソケット

難易度 中工具ドライバー・ラチェット・電工ペンチ時間1〜2時間

スマホをナビとして利用する人には必須です。ただ電装パーツなので、ここから難易度が一段上がります。

いちばんやってはいけないのがバッテリーから直接(常時電源で)取ることです。キーを切っても電気が流れ続けるので、充電ケーブルを挿したままエンジンOFFで放置するとバッテリーが上がります。必ずキーと連動する電源(ACC)から取るか、リレーをかませてください。ヒューズも必ず入れる。

よく分からない方はプロに聞くか、ショップに任せてください。

整備士のひとこと

たくさん電装パーツを装着したい方は、デイトナから出ている「Dユニット」がオススメです。気になった方は調べてみてください。

スクリーン

難易度 中工具六角レンチ・ラチェット時間1時間前後

高速道路の疲れ方が変わります。ネイキッドに小さいスクリーンを付けるだけでもだいぶ違います。

注意点はミラーやハンドルとの干渉です。フルロックまでハンドルを切って当たらないか、必ず確認してください。あと大きすぎたり長すぎるスクリーンは、横風でハンドルを取られることがあります。

グリップヒーター

難易度 中工具グリップ交換の工具+電工工具時間2〜3時間

冬にバイクに乗る人は、装着している方多いです。電熱グローブがイヤな方はこちらですね。

ここも電装なので電源の取り方に注意。それと、バッテリーの電圧が下がったら自動で切れる機能(電圧監視)が付いたモデルを選んでください。原付などのバッテリー容量が小さいバイクや走行中の発電量に余裕がないバイクだと、これがないと出先でバッテリー上がりになる可能性があります。

アジャスタブルレバー

難易度 中工具ラチェット・スパナ時間30分〜1時間

純正レバーにアジャスト機能が無く、手の小さい人には効果絶大です。レバーの位置が近づくだけで、渋滞のときの左手の疲れが全然違います。

ただしブレーキ側は安全に直結する部品です。ここだけは安さだけで選ばないでください。それと転倒したときに折れずに畳まれる可倒式を選んでおくと、立ちゴケしてもレバーが生き残る可能性が上がります。

ノーブランドの中華製レバーでガタが多く、操作性に違和感が出るものをよく見ます。ここはお金出して買った方が良いと思います。

5.【積載】ツーリングが化けるパーツ

「荷物が積めない」はバイクの数少ない弱点です。ここを解決すると、行ける場所やお土産が増えます。

リアキャリア

難易度 中工具ラチェット・トルクレンチ時間1時間前後

あらゆる積載の土台になります。これがあるとボックスもバッグも一気に載せやすくなる。

必ず耐荷重を確認してください。キャリアにもボックスにも「何kgまで」という指定があります。ここを超えると、走行中の振動でステーが折れることがあります。取り付けはトルクレンチで規定トルクで締めるのを徹底してください。

また、キャリアは車種専用品の装着をオススメします。汎用品はしっかりと装着できない場合が多いです。

シートバッグ

難易度 低工具不要(ベルト固定)時間15分

野暮ったいキャリアも無し。使わない時は外せる。失敗しない積載カスタムです。まずこれから試すのをおすすめします。

マフラーやウインカーにベルトが当たらないかを確認することと、幅が大きすぎるバッグは落下のリスクがあります。ショップで買う方は「試しに車両に合わせてみたい。」とお願いして合わせて見ましょう。

ヘルメットロック

難易度 低工具六角レンチ時間15分

純正のヘルメットホルダーがシート下で使いにくい車種、けっこう多いです。ハンドルやフレームに後付けできるタイプを足すと、コンビニなどで降りるときが一気に楽になります。

6.【転倒対策】立ちゴケの被害を減らすパーツ

立ちゴケは、上手い下手に関係なく起きます。信号待ちで足を着いた場所が砂利やったら、それで終わりです。

エンジンスライダー・エンジンガード

難易度 中工具ラチェット・トルクレンチ時間1〜2時間

倒れたときにカウルやエンジンカバーが直接地面に当たるのを防ぎます。カウル1枚の値段を考えたら、十分に元は取れます。

ただし正直なところを言うと、これは万能ではないです。スライダーが支点になって、逆にフレームやエンジンハンガーに力が集中することもあります。だからこそ車種専用設計のものを、規定トルクで正しく付けるのが大事になります。汎用品を無理に付けるくらいなら、付けないほうがマシなくらいです。

ミラー

難易度 中工具スパナ・六角レンチ時間30分

見た目も変わるし、視界も変わる。ただしミラーは保安基準がある部品なので、小さすぎるものや、後方が見えないものはダメです。

作業面での注意はネジです。ヤマハなど車種によって左側が逆ネジ(反時計回りで締まる)になってます。知らずに正ネジのつもりで力を入れて、ネジ山を潰すのがお約束の失敗です。ネジの径とピッチも車種で違うので、必ず適合を確認してください。

ショップで適合を確認してもらってから購入するのが良いでしょう。

7. ここから先は「一段上」のパーツ

ここまでのパーツは、失敗しても被害が小さいものを選んでます。ここから紹介する3つは法律の基準が絡むので、初心者の1個目にはおすすめしません。やるなら基準を理解してからにしてください。

ウインカー(方向指示器)

LEDに替えたい人が多いんですが、ウインカーは保安基準で細かく決まってます。国土交通省の告示に書かれている二輪車の基準は、こうなってます。

番号 車体(後方から見た図) 照明部の中心どうしで 150mm 以上 (後方用の場合。前方用は 300mm 以上/光源8W以上なら 250mm 以上) 地面 2.3m 以下 灯光の色は橙色 毎分60〜120回で点滅 照明部は7cm²以上
国土交通省「道路運送車両の保安基準の細目を定める告示 第137条(方向指示器)」より作図。現行の基準であり、年式によって適用される規定が異なる場合があります。

つまり、小さすぎるLEDウインカーは面積の基準を満たさないことがあります。それと電球からLEDに替えると消費電力が減るせいで、点滅が異常に速くなる(ハイフラ)。これも「毎分60〜120回」から外れるので、対策のリレーや抵抗が必要になります。

近年は面積が豆粒みたいなウインカーでも、車検に通るLEDウインカーも存在します。これは本当に車検に通るのですが、「保安基準適合品」や「Eマーク」がレンズに刻印されているものしか基本的には車検に通らないです。注意して選びましょう。

フェンダーレスキット

見た目はスッキリして人気ですが、ナンバー灯は取り外しNGですし、ナンバープレートの取り付け角度にも基準があります。キットに付属してるナンバー灯を「見た目が悪いから」と外してしまうと、それだけで整備不良です。

車両寸法の「長さ」はフェンダーレス化によって変わりますが、指定部品となるので車検はOKです。

マフラー

みなさん純正から交換したいパーツと思います。ただ規制がかなり厳しいのもここです。

2010年(平成22年)4月の規制で、それまでの近接排気騒音に加えて加速走行騒音が測定項目に追加されました。この規制以降に生産された車両に社外マフラーを付ける場合は、性能等確認済表示(JMCAプレートなど)のある政府認証マフラーを選ぶ必要があります。

ややこしいのは年式によって適用される基準が違うことです。自分のバイクがどの基準に当たるのかを確認してから選んでください。「バイクは爆音でナンボ」と思って選ぶと、車検に通らないどころか整備工場で入庫拒否を喰らうこともあります。ショップで確認しましょう。

マフラーは説明することが多すぎるので、別記事でまとめました。年式ごとの騒音規制値、認証マフラーの仕組み、おすすめのメーカーまで解説してます。交換を考えてる人は先に読んでみてください。

この章のまとめ

ウインカー・フェンダーレス・マフラーは「付けたい」より先に「基準を調べる」が必要なパーツです。逆に言うと、そこさえクリアすれば堂々と楽しめます。ショップで確認してもらうことをオススメします。買わずとも教えてくれる所が多いです。

8. なぜ正規メーカーのパーツを選ぶのか

安いパーツはいくらでもあります。それでも私が正規メーカー品をすすめるのは、根性論ではなくて理由があります。

  • 適合表がある——型式と年式で引ける。買う前に確実に確認できる
  • 寸法が出てる——実車に当てて開発されてるので、付かないことがまず無い
  • 説明書と規定トルクが付いてくる——初心者にはこれが一番デカい
  • 部品が後から出る——ボルト1本無くしても補修部品を頼める場合が多い
  • 不具合があれば対応してもらえる——連絡先がある、というのは思ってる以上に価値があります

逆に、海外通販の無名パーツで多いのが、さっき挙げた「穴が合わない」「ステーが足りない」というやつです。届いてから加工する羽目になって、結局時間も金も余計にかかる。安く済ませたつもりが一番高くつくのは、工具と一緒です。保証ももちろんありません。

コピー品には手を出さないでください

海外通販には、有名メーカーのロゴが入ったコピー品が流通しています。品質が粗悪なものが多いはもちろんですが、2022年10月1日施行の改正商標法により、個人で使う目的であっても、海外の事業者から送られてくる模倣品は「輸入してはならない貨物」として税関で没収の対象になりました。安く買ったつもりが、届かないうえに金も戻ってこない、ということが起こります。

9. カスタムを始める前に、工具だけは揃えてください

ここまで読んでもらえば分かると思いますが、この記事で紹介したパーツの失敗のほとんどは、工具で防げます。

最低限これだけあれば、今回のパーツはだいたい付きます。

工具今回のどのパーツで使うか
ラチェットハンドル+6角ソケットほぼ全部
六角(ヘキサゴン)レンチバーエンド、ヘルメットロック、カウル脱着
トルクレンチキャリア、スライダー(規定トルク指定があるもの)
電工ペンチ・検電テスターUSB電源、グリップヒーター
パーツクリーナーグリップ交換など

工具の選び方は「バイクいじりに必要な工具10選」で詳しく書いてます。先にそっちを読んでもらうと、この記事のパーツも安心して触れると思います。

10. まとめ

この記事のまとめ

  • 1個目は「見た目」ではなくて「困ってること」から選ぶ
  • 外した純正部品は捨てない。適合は型式と年式で確認する
  • 手軽なのはグリップ・バーエンド・シートバッグあたり
  • 満足度が高いのはUSB電源・グリップヒーター。ただし電装は電源の取り方に注意
  • ウインカー・フェンダーレス・マフラーは保安基準が絡むので一段上
  • ブレーキ・ホイール・ハンドル・サスは安さで選ばない

カスタムは、正解が決まってない遊びです。人のバイクと同じにする必要もないし、誰かに褒められるためにやるもんでもないです。

ただ、失敗してお金を無駄にしてしまうのはもったいない。だから最初の一個は、確実に成功するやつから行ってください。一個うまくいったら、次はもう怖くないです。

安全に関するお願い

この記事の内容は執筆時点の情報にもとづいています。保安基準などの法令は改正されることがあるため、実際の作業前には最新の情報と、車種ごとのサービスマニュアル・パーツの取扱説明書を必ず確認してください。

社外パーツの装着は自己責任となります。とくにブレーキ・ステアリング・サスペンションなど走行安全に直結する部位については、少しでも不安があれば専門業者にご依頼ください。当ブログは、本記事の情報を利用して行った作業や購入によって生じた損害について責任を負いかねます。

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